Wednesday, June 2, 2021

第27回:WTO事務局を支える人々:来たれ、日本からの国際公務員! - Ministry of Foreign Affairs of Japan

antakatabur.blogspot.com 第27回:WTO事務局を支える人々:来たれ、日本からの国際公務員!|外務省

令和3年6月2日

 連載では、これまでオコンジョ=イウェアラWTO事務局長の横顔就任後の精力的な活動を取り上げてきた。これを支えるのが総勢600名余りの専門家集団を擁する事務局である。今回は、このうち、新体制の屋台骨を担うべく任命された幹部別ウィンドウで開く、いわば「右腕」の顔ぶれをご紹介したい。

 まずは、5月4日に事務局長が任命した4名の事務局次長(Deputy Director-General)。機構図を見ると、ナンバー・ツーに位置する。次長は通常、5つの地域区分(北米、南米、欧州、アジア・大洋州、アフリカ)のうち事務局長の出身地域を除いた地域からひとりずつ任命され、WTO事務局内に16ある部局を分担する。
 今回、アンジェラ・エラード(米国)、アナベル・ゴンサレス(コスタリカ)、ジャン=マリー・ポーガム(フランス)及び張向晨(ジャン・シャンチェン)(中国)が事務局次長に任命された。オコンジョ=イウェアラ事務局長も胸を張るとおり、事務局トップとナンバー・ツーを合わせた5名のうち、女性が過半数を占めるのは初めてのことで、事務局の女性参画拡大の意欲が表れている。ひとりずつその横顔を見ていこう。
 アンジェラ・エラード氏は、弁護士や米国下院歳入委員会スタッフとしてキャリアを積み、貿易及び国際経済政策に精通する。25年以上に渡り、議員や政権幹部と共に超党派の貿易政策に携わってきた。
 アナベル・ゴンサレス氏は、コスタリカの外国貿易大臣やWTOの農業・コモディティ部長(2006から2009年)を務めた経験の持ち主である。政府や国際機関で活躍してきた、貿易・投資・経済開発分野の専門家。
 ジャン=マリー・ポーガム氏は、フランス政府内で貿易分野の高官を歴任しており、豊富な実務知識を有する。直近ではフランスのWTO常駐代表を務め、WTOとUNCTADにより設立された国際貿易センター(ITC)の事務局次長の経験もある。
 張向晨氏は、前中国商務部副部長。中国政府内で30年以上国際貿易分野の知識と経験を積み、中国のWTO常駐代表(2017から2020年)も務めた。中国が抱える様々な構造問題や政策・慣行の実情に通じるとともに、改革開放の取組の中での中国のWTO加盟(2001年12月)など多くの貿易交渉で活躍してきた。

 事務局次長の4名に加え、文字どおり「側近」として事務局長の日々の実務を献身的に支えるのが事務局官房である。官房は時々により人数や役職は変わるものの、「頭でっかち」では逆に実務に支障が出てしまう。その少数精鋭部隊の中核が、官房長(英語では「チーフ・オブ・スタッフ」。フランス語では「シェフ・ドゥ・キャビネ」。「首席補佐官」と訳されることもある)及び上級補佐官(「シニア・アドバイザー」)だ。
 官房長には、事務局長と同じくナイジェリア出身のブライト・オコグ氏が就いた。氏は財政政策や金融経済、国際経済・金融に精通したマクロ経済学者で、国内外でキャリアを積んできた。前職は、アフリカ開発銀行理事。
 上級補佐官には、モーリシャス出身のユヴァン・ビージター氏及び日本の宇山智哉(うやま・ともちか)氏が採用された。ビージター上級補佐官は、前職の世界銀行のチームリーダーをはじめとして国連、国際労働機関(ILO)、国際貿易センターなど国際機関での豊富な経験を有している。また、宇山上級補佐官は、日本の外務省でキャリアを積み、貿易分野では二国間及び複数国間の経済協定交渉やWTO関連業務に知見が深い。前職では内閣官房TPP等政府対策本部企画・推進審議官を務めていた。

 総じてみると「貿易屋」ではないオコンジョ=イウェアラ事務局長の脇を、貿易の専門家ががっちりとスクラムを組んで支える体制となった。本年末には第12回閣僚会議(MC12)を控える。まったなしの課題であるWTO改革を迅速に進めるべく、3月1日に就任した新事務局長の下で事務局職員が一丸となり、164の加盟国を擁するWTOの活動を支えていく体制が整いつつある。
 ここで気になる数字をひとつ。事務局職員のうち、日本人職員は今回紹介した宇山上級補佐官を含めわずか5人しかいない。デジタル化の進展や新型コロナの感染拡大など国際貿易を取り巻く環境が日々劇的に変化していく中、自由貿易の恩恵を受けて発展してきた日本が、経験や知識をその核であるWTOに還元していくことは、実にやりがいのある仕事ではないだろうか。
 「来たれ、日本からの国際公務員!」 WTOの舞台で多角的貿易体制の維持・強化、ひいては、近年さまざまな逆風にさらされている多国間協調の強化と刷新に共に参画しよう。


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