
「ザ・ピロウズ」が6年ぶりに高松に来た。
1989年結成の3人組ベテランロックバンド。中学時代からのファンで、高松市内のライブハウスに自然と足が向かった。
疾走感あふれるポップなサウンド、青春の悩みや恋の切なさをぶつけた歌詞。自分に自信が持てず、
ファンからは「永遠のブレイク寸前バンド」とも呼ばれるが、30周年の2019年には、横浜アリーナでのコンサートを成功させた実力派だ。
大阪で過ごした学生時代は何度もライブハウスを訪れたが、記者になり、香川に赴任した2年前からは、仕事に忙殺され、ライブを楽しむ余裕がなかった。
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久しぶりのライブ。会場に入ると、新型コロナウイルスの影響に、改めて驚かされた。
900人ほど収容できる広さだが、椅子は前後左右とも1席ずつ空け、満席でも160人。「声を出して歌う行為はご遠慮ください」との貼り紙もあった。
ライブと言えば、とんだりはねたり、隣の客の汗のにおいさえ感じられるものだが、この日はリズムに乗って腕を上げ、体を揺らすだけだった。
それでも、ピロウズの魅力は変わらなかった。ボーカルの山中さわおは言う。「ずっと変わらず君と僕の世界を歌い続けてきた」
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ライブの中盤、お気に入りの一曲が流れた。
「行こう 昨日までのキミを 苦しめたもの全て この世の果てまで 投げ捨てに行こう」
01年に発売された「この世の果てまで」だ。かき鳴らされるギター、ズシンとくるベースの重低音。さわおのまっすぐな歌声が胸に響く。
曲の合間、さわおが客に語りかける。「意味がなくても楽しいのがロックンロールだろ」。本当にその通りだ。音の洪水に身を委ねた。トリプルアンコールまで約2時間半。あっという間に終わった。
終了後、自営業の男性(46)に声をかけた。長年のファンで、約20年前に発売された「ROBOTMAN」に胸を打たれたという。曲は「悲しいリズムが心で鳴りやまないのは ただ死ねないだけのロボットになったあの日から」の歌い出しで始まる。男性は当時、仕事がつらく、自分をロボットに重ね合わせて何度も聴き、「転職活動を行う勇気が出た」という。
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コロナ禍で、ライブハウスの苦境が続く。
当初は多くの店が休業に追い込まれた。安心してお客さんに来てもらうため、県内では「県ライブハウス協会」が発足し、感染防止対策に取り組んでいる。
帰り道。余韻の耳鳴りが心地よく、どうかこの文化がなくならないで、と強く願った。(敬称略)
(藤岡一樹)
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