Tuesday, January 10, 2023

「散々、哀れをしてきた」破壊され火を放たれた我が家…92歳女性がいま取材に応じた理由 - 沖縄タイムス

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阿波根昌鴻さんの写真集をめくり、土地接収の被害を証言する山城キヨさん=2022年11月、伊江村

阿波根昌鴻さんの写真集をめくり、土地接収の被害を証言する山城キヨさん=2022年11月、伊江村

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[ボーダーレス 伊江島の78年]

 米兵たちは「ドヤドヤ」と来て、おので「ドドド」と柱を倒し、家に火を放った。家族は「ガタガタ」震えるばかりだった。1955年3月、米軍による強制接収で家を追われた山城キヨさん(92)=伊江村=が当時の被害を初めて取材に証言した。「また戦になるのか」と不安な世相に、背中を押されたという。(編集委員・阿部岳

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 強制接収の対象にされたのは13戸。米軍は一番最後に、新築間もない山城さんの家に襲いかかった。3月14日午前8時ごろ、外から「出なさい」と声がかかった。同居の家族8人はちょうど朝食の時間だった。

 最初、夫の守安さんは「絶対出るなよ」と家族に告げ、抵抗した。茶わんや箸を持ったまま震えていると、数人の米兵が押し入ってきて、家を支える松の柱におのを振り下ろした。

 3回ほどで柱が切り落とされ、屋根が揺れた。家族がやっとの思いではい出すと、銃剣を手にした米兵に取り囲まれていた。家はマッチで火を付けられ、「一挙に火が上がった」。続いて馬小屋や豚小屋も焼かれた。

 茅(かや)ぶき屋根の茅は大切なものだった。親戚の男性が、まだ燃えていない茅だけでも救い出そうと、落ちた屋根に駆け登った。男性が必死で投げ落とすそばから、米兵は茅にまで火を付けていった。山城さんは男性に向かって「やめなさい、また焼くんだよ、降りなさい」と叫んだ。

 抵抗すれば撃ち殺されると思った。涙も出なかった。命じられるまま、米軍が用意した粗末なカバヤー(テント小屋)に移動した。「こんな所で子どもたちを育てるのか」。中に入って初めて、号泣した。

 今も悪夢にうなされることがある。「散々、哀れをしてきた」。思い出したくもない記憶で、これまで詳しく語ったことはなかった。夫守安さんも亡くなり、立ち退きに遭った13戸の中で当時を語れる人はほぼいなくなった。

 なぜ、取材に応じることを決めたのか。山城さんは「この5、6年の間に世の中が変わって、また戦になるのか、と思う。このまま平和でいけばいいな、私の経験も話しておこう、と思った」と語った。

【記者の視点】住民蔑視 不正義も自覚

 「銃剣とブルドーザー」による伊江島の土地接収を命じた作戦命令書や関連文書は、死者が出ることも顧みない米軍の強硬姿勢を浮き彫りにしている。背景には住民への蔑視がある。同時に、自らの不正義を自覚し、反発を恐れる支配者の姿ものぞく。

 一連の文書は在沖米空軍の「正史」に当たる年次報告に含まれる。伊江島の土地接収は「invasion(侵略)」と表現され、沖縄戦における伊江島攻略戦の再現と位置付けられている。

 文書を発見した琉球大学の我部政明名誉教授は「米軍は住民の抵抗が非暴力であることを知りながら武装兵を投入した。軍隊だからそれ以外の手段がない。そういう組織が復帰まで住民を統治していたことが問題だ」とみる。

 実際、文書には住民の非暴力性を認識している記述がある。「米軍にとって幸運なことに、沖縄の人々は、似た環境に置かれたキプロス、アルジェリア、インドネシア、モロッコの人々と違って報復や暴力を好む傾向がなかった。米国人の夜の一人歩きは米本国よりも安全だった」

 他国で同じことをすれば物理的抵抗が起きかねないことを、米軍は理解していた。伊江島に過剰な軍事力を投入したことについて、我部氏は「日頃は従順な住民がいつコントロールできなくなるか分からない、という恐怖心があったのではないか。自らの行為のひどさをよく知っている裏返しだ」と指摘する。

 支配者は内心では住民の怒りに不安を抱え、だからこそまた過剰な力の行使に走る。不正義の循環はいつまでも続かない。この文書で沖縄の人々を「楽天的で無責任」と差別的に描いた米軍は、やがて非暴力の抵抗に屈して施政権を手放すことになった。(編集委員・阿部岳)

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