Monday, August 9, 2021

“人吉の味”よみがえる 老舗「上村うなぎ屋」10日再開 秘伝のたれも復活 - 熊本日日新聞

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 昨年7月の豪雨災害で被災した熊本県人吉市紺屋町の老舗「上村うなぎ屋」が10日、1年1カ月ぶりに営業を再開する。豪雨で、すべて流失した秘伝のたれも復活。創業当初から守り続ける“人吉の味”がよみがえる。

 上村うなぎ屋は創業114年。3代目の由紀穗さん(71)の祖父が球磨川支流の山田川近くに開店した。あっさりした甘いたれが、ふんわり焼き上げるウナギを包む逸品だ。県内外の来店客で約100席は連日埋まり、店先には行列ができていた。

 それが、豪雨で山田川が氾濫。濁流は店舗1階の戸を押し流し、一気に2階まで流れ込んだ。近くの自宅から駆けつけていた妻惠子さん(69)や次男元気さん(41)らは3階に避難。創業以来継ぎ足してきた、たれが入ったすり鉢を持ち出す余裕はなかった。冷蔵庫は倒れ、調理場や焼き台も泥をかぶった。

 由紀穗さんは災害後に心身の体調を崩し、閉店も考えた。ただ、泥出しのボランティアで連日来てくれる常連客らの姿に、「もう一度やってみよう」と少しずつ前を向けるようになったという。同じ場所での再開を決め、店内を改装して座席数は80席とした。

 失ったたれの心配はしていなかった。レシピを知るのは、由紀穗さんと元気さん親子だけ。客がうなる絶妙なバランスの甘みは、たれを作り続けてきた2人の舌が覚えている。

 7月下旬、たれの仕込みに臨んだ。豪雨前から、宇土市の業者から取り寄せているしょうゆをベースに砂糖やみりん、ウナギのだしを加え、1週間かけて調整。「これまでと変わらない」と納得する味に仕上がった。

 開店を翌日に控えた9日、従業員も含めて配膳や調理の作業手順などを確認。試し焼きもし、招待した常連客が「うまい」と喜ぶと、由紀穗さん夫婦は胸をなで下ろした。

 「ここまで苦悩の連続だった。楽しみの一方で不安もあるが、明日からは地道に、ゆっくりと歩んでいきたい」。夫婦は、言葉をかみしめるように話した。(小山智史)

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