声の技術よりも、キャラクターに“合っている”かどうか
【神木隆之介】もう…とにかくひたすら勉強させていただいて、すべて教えていただくという想いですよ。僕はアニメが大好きなんですけど、大好きな世界に行かせてもらっているというリスペクトのスタンスです。現場には神様みたいな声優さんたちがたくさんいますから、「すごいなー」と「キラキラしてる!」という世界(笑)彼らは“声職人”ですから、発声の仕方が俳優の僕とはまったく別物なんですよね。
──では、神木さんに「声の出演」のオファーが絶えない理由はなぜでしょうか。
【神木】こればっかりはオファーしてくださる方に聞かないと、僕もわからないのですが…。普段から仲良くさせてもらっている声優の梶裕貴さんは、「僕ら声優には出せない演技のニュアンスが(顔出し演技メインの)俳優さんにはあるから勉強になっている」と言ってくれました。
──俳優ならではの「声」のニュアンスとは?
【神木】たとえば僕の声が、演じるキャラクターと“合ってる声”だと思ってもらえるかどうか。僕は、声優と俳優の活動に「どっちがいい」という垣根はないと思っているんです。だけど技術はまったく別モノですよね。そもそも僕は、学校でしっかり技術を学んだ上でお仕事をされている声優さんとは、スタートも土台も違いますから…。声優さんには敵わないし、敵おうともしていません。それでも僕が参加させてもらっている意味としては、いかに自分の声でその役を表現できるか。技術が至らない分、研究は怠れません。
表情とともに伝える「声」の熱量、難易度マックスへの挑戦
【神木】僕はアフレコでもけっこう顔の表情を駆使するんですよ。たとえば今回の『おじさまと猫』でも、ふくまるの眉が下がったら自分の眉も下げながらセリフを言ってみるとか、うれしいシーンは思いっきり笑顔でとか。声だけの演技でも、自分の表情で声の感情の乗り方がまったく変わってくるので、そこはすごく意識しています。
──今回は、「猫」の感情を表現するという難しさがあります。難易度は10段階中どのくらいですか?
【神木】難易度はマックスの10です! 理由はまず、セリフがすべて“にゃん語”であること。「〜なのに」が「〜にゃにょに」となるので、“人間語”とは違う意味での滑舌を意識する必要がありました。そこをけっこう苦労したのと、あと僕にとって大きかったのは、原作漫画のプロモーション動画では、声優の釘宮理恵さんがふくまるを演じていらっしゃるんですね。
──釘宮さんとは『映画ドラえもん のび太の新恐竜』で共演されました。
【神木】はい。僕たちアニメ好きにとって、釘宮さんは「可愛い」の体現者なんです。ふくまるのことも本当に愛おしいキャラクターに仕上げていらして、その上で僕が演じるふくまるはどんな表現で行くべきか、とても不安でした。僕の中でふくまるを本当に可愛いキャラクターにするために、声のトーンやセリフの言い回しなど、方向性が決まるまでには試行錯誤もたくさんありました。
──アニメ好きの目線で工夫もされたんですね。では試行錯誤して、ふくまるの声を確立できた決め手は?
【神木】おじさま役の草刈正雄さんとは一度だけ、テスト的に現場でセリフのやり取りをさせていただいたんです。草刈さんに初めてふくまるの声を聞いていただくことに、すごくドキドキしながら第一声を発したんですが、その瞬間、草刈さんの表情がぱああっとなって「可愛い! 素晴らしい!」とおっしゃってくれて。草刈さんのリアクションのおかげで、ふくまるの声はこれで大丈夫だと確信できたところは大きかったですね。
──おじさまとの関係性が深まるにつれて、ふくまるの声の表現はどのように変わるのでしょうか?
【神木】ふくまるは小さい頃に家族と離ればなれになって、ペットショップでもほかの猫たちがどんどん新しい家族と出会っていく中、1人だけ取り残されていました。「自分なんか誰にも愛されないんだ」って、ずっと孤独を味わっていた子だったんです。おじさまが迎え入れてからも、うれしい反面、警戒心もあってちょっとやさぐれた声を出していて…。その少し硬くなっていた心が、おじさまや周りの人の愛情によって、じんわり溶けて可愛くなっていく感じが声でも表現できていたらと思います。
──お気に入りシーンを教えてください。
【神木】おじさまの家に来て、最初にカリカリを食べるシーンが好きですね。いつもペットショップで食べていたカリカリと同じものだとわかっているんですけど、味そのものではなく、おじさまの愛情がうれしくて、「最高に美味しい!」という感じでがっついて食べるんです。そのあとにお代わりをおねだりするのが、本当に猫っぽくてあざとくて可愛くて(笑)。僕としてもちょっと甘い声で挑んだシーンなので、注目していただけたらうれしいです。
1月6日(水)深夜0時58分〜
出演/草刈正雄、声の出演/神木隆之介
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