アルバイト先を時給が高い福井県福井市内のラウンジに変えた大学3年の春、新型コロナウイルスが猛威を振るいだした。福井県内の大学4年の男子学生(22)は、店が休業になり奨学金以外の収入がたたれた。
バイトは6月ごろに再開したが、客足は戻らず、給料はわずか。大学の講義が再開した後は、遅れを取り戻すため5、6限目までみっちり入った。掛け持ちはできない。食事を我慢したり、親に買ってもらったカーディガンや好きだったアクセサリーを売ったりしてつないだ。姉からもらったテレビも手放した。部屋には冷蔵庫と洗濯機、布団、こたつだけが残った。
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静岡県浜松市出身。3人きょうだいの末っ子。父は電気配線などを請け負う自営業だが、病に苦しんでいた。母はパート。お金に余裕はなく、仕送りはない。
学生生活は、毎月4万円の奨学金とバイト代でやりくりし、実家の家計が苦しいときは、学費の一部を自分で払った。とにかくバイトをすれば何とかなると思っていた。新型コロナで社会情勢ががらりと変わり、自分一人の力ではどうしようもない現実を突きつけられた。
そんなとき、困窮学生向けの臨時奨学金の案内メールが大学から届いた。給付型や金利の低い奨学金など計五つを申し込んだ。結果は全て不採用。その一つには「学力基準を満たさないため」と理由が書かれていた。頭が悪くてお金がないと学ぶ資格もないのか―。就寝前、泣きながら思った。不採用通知の紙は破り捨て、退学を考えた。
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救われたのは、福井大独自の給付型奨学金制度だった。昨年6月から今年3月まで、限度額いっぱいの毎月3万円の給付を受けた。大学側は8月末までに、延べ1419人に約3500万円を給付している。学生サービス課は「今でこそ50人を切るくらいまで減ったが、多い月では300件近く申請があった。思った以上に苦しんでいる学生がいた」と振り返る。
バイト先は今では客足が少しずつ戻り、働ける日が増えてきた。生活はできている。物欲はなくなり、最低限の買い物しかしなくなった。
だけど、教員になる夢は捨てきれていない。目標も何もなかった高校3年生のとき。親身に相談に乗ってくれた担任の先生にあこがれた。今年6月、母校の静岡県内の高校に教育実習へ行った。少し夢がかなった気がした。
卒業まで半年を切った。勉強より、まず生きることに必死な学生もいる。そんな人に救いの手を差し伸べてくれる社会になってほしいと願う。
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衆院選が10月19日に公示される。新型コロナウイルス下の福井県内の現場をリポートし、「政治への叫び」を紹介する。
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