Sunday, January 14, 2024

よくある「市役所前」バス停の研究家が「むち打たれた」…何が起きた? 「前駅」研究家とこだわり対談:東京新聞 ... - 東京新聞

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◆飯島正之さん 「市役所前」バス停 675市訪ね歩き
◆古今亭駒治さん 「前駅」研究 メジャーを手に300駅

互いの調査や成果について話す古今亭駒治さん(左)と飯島正之さん=千代田区で

互いの調査や成果について話す古今亭駒治さん(左)と飯島正之さん=千代田区で

 日本で一番多いバス停は「市役所前」では? こんな仮説を立て、全国の市を確認して回っている川崎市の自営業飯島正之さん(40)が北陸、東海、近畿地方を踏破した冊子「中日本制覇版」を昨年完成させた。その記念に、全国の「前」駅を研究する落語家古今亭駒治さん(45)と対談した。なぜ2人は「前」にこだわるのか。調べた先にあった驚きの展開とは。

 -調査のきっかけは

飯島正之さん

飯島正之さん

 飯島さん 23歳のとき、旅先の北海道で「日本で一番多い名前のバス停は何だろう」と疑問に思いました。ネット検索しても答えはない。地元の川崎にもあるので「市役所前じゃないか」と帯広市役所に見に行ったら、本当に「市役所前」だった。それで各地を巡るようになりました。

 駒治さん 元々「乗り鉄」なんです。小田急線の「読売ランド前」(川崎市)って、山の上に遊園地があってとんでもなく遠いのに「前駅」。計ったら駅から1988メートル、歩いて25分46秒もあった。京王線に「府中競馬正門前」(府中市)もあるけど、正門って詳細に場所指定してくるのはなぜ? 「前駅」が気になって調べ始めました。

 -ちなみに「市役所前」駅はありますか

  全国で8駅あり「市役所前」は前駅で最も多い名称です。

  路面電車も駅として数えた場合ですね。

  一方、地名などが頭に付く「〇〇市役所前」は10駅ある。市の誇りを示したいのか、他の地域から来る人への親切か、新しい駅は地名が付く傾向です。

 -お互いの調査の印象は

古今亭駒治さん

古今亭駒治さん

  駒治さんの着眼点と調査力には脱帽です。見習って民間と市営のバスを分類し始めました。「前が付くバス停と付かないバス停の因果関係」についても推測と研究を深めたい。

  飯島さんの調査はゲーム性が高い。行かないと市役所前バス停があるか分からないのでわくわくしますが、確実に存在する鉄道駅と比べて大変…。

  車内アナウンスとバス停の表裏が全部異なる表記だったケースもありました。そういうズレもまた楽しい。

  飯島さんがただの「市役所」バス停を巡っていたら、この対談はなかった。やっぱり「前」が付いているからおもしろい。「前」という表記の揺れがつないでくれている。

 -ところが昨秋、飯島さんの調査を揺るがす事態が起きました

  十何年ぶりに「日本で一番多い名前のバス停」を検索したら、誰かが国土交通省のデータをまとめたというサイトがあり、1位は「中村」です、と。

  えっ。中村は近所で見たことがない。

  交通アプリで路線バス検索をすると、中村バス停は198もあった。市役所前のライバルは「本町」とばかり思っていたのに。

  隠れボスキャラが出てきた感じ。

  理由を探ろうと、中村バス停が多い長野県に行きました。ある町では「下村」「中村」と続いて「上村」バス停がない。地元の人に聞くと「上は昔から『山口』」という。別のバス停では「ここは村の真ん中だから『中村』」と言われました。

  調査となると、気が遠くなりますね…。

  中村の突然の浮上にはむち打たれましたが、一番多いバス停はどこかという、本来の命題に立ち返った気持ち。市役所前と並行して「中村プロジェクト」にも取り組みます。

  私は今年中に調査を終わらせ、前駅に対し寺社や学校、病院などがどのくらいあるか、駅のできた時期と合わせてトレンドを分析したい。それに大阪の堺市には「御陵前」という仁徳天皇陵から約2.2キロも離れた前駅があって、あまりの遠さに感動する一方で、全国にはホーム直結のゼロメートル駅もあるんです。これこそ前駅の究極の姿。駅と施設を近づける鉄道側の努力も、高座で伝えていきたいですね。

◆17年がかり 冊子で紹介

日本最北端の「市役所前」バス停で写真に納まる飯島さん=2007年4月、北海道稚内市で(本人提供)

日本最北端の「市役所前」バス停で写真に納まる飯島さん=2007年4月、北海道稚内市で(本人提供)

<市役所前バス停プロジェクト> 2007年に開始。「市役所」「〇〇市役所前」「県庁・市役所前」バス停は含まない。バス停と自らを撮影するのがルールで、冊子やプロジェクト名のサイトで公開している。全国全792市のうち675市を訪れ、うち189市で市役所前バス停を確認したが、17年がかりの調査の間に市役所の移転や路線の廃止があり、なくなった市役所前バス停の数は新設数を上回るとみている。

<いいじま・まさゆき>  1983年川崎市川崎区生まれ。自由の森学園中学高校(埼玉県)で文章を書く楽しさに目覚め、校内でミニコミ誌制作を始める。東京国際大卒。家業の金物店を営みながら、自作の冊子を各地の同人誌イベントなどで販売。最新作は「それでも川崎区が好き。」

◆距離と時間 しっかり確認

韓国ソウル市の東廟前駅付近を計測する駒治さん=2017年7月(本人提供)

韓国ソウル市の東廟前駅付近を計測する駒治さん=2017年7月(本人提供)

<「前駅」研究> 「『前』が付く駅は、本当にその施設の前にあるのか」をテーマに2016年に着手。ロードメジャーとストップウオッチを用い、改札から施設入り口までの距離と所要時間を計る。駅名の種類を表す「系」、施設との関係性を示す「型」を定めて「~系~型前駅」と分類。鉄道要覧に基づき、約340ある全国の前駅のうち約300駅を踏破。自身のサイトで紹介している。

<ここんてい・こまじ> 1978年渋谷区生まれ。2003年玉川大卒業後、古今亭志ん駒に入門。07年二つ目、18年志ん駒の死去に伴い、古今亭志ん橋に移門。同年真打ち昇進。鉄道をテーマとした新作落語を手がける。1月23日午後6時45分から、日本橋社会教育会館(中央区)で独演会を開催予定。

 文・安藤恭子/写真・川上智世

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