Thursday, March 2, 2023

アートな時間:節度の保たれたリメイクだ。主人公が観客のそばに ... - 週刊エコノミスト Online

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映画 生きる LIVING

 ミスター・ウィリアムズ(ビル・ナイ)が〈ラウアン・トゥリーの歌〉を口ずさむ場面が、映画に2度出てくる。

 ミスター・ウィリアムズとは「生きる LIVING」の主人公だ。ラウアン・トゥリーとはナナカマドの木を指す。昔のスコットランド民謡で、古語が多用されている。聞き取るのはけっこう大変だが、《夏に白い花が咲き、秋に赤い実がなる》という部分や《その木を見ると、亡くなった旧友が心に蘇(よみがえ)る》という箇所は、ビル・ナイの歌声と姿によく似合っていた。

「生きる LIVING」は、黒澤明の名作「生きる」(1952年)のリメイクである。話はみなさんご存じだろう。責任をひたすら回避しつづけ、無難な人生だけを心がけてきた市役所の課長(志村喬)が、末期癌(がん)で余命いくばくもないことを悟り、生きていた証を残そうとする。彼がブランコに揺られて低い声で歌った〈ゴンドラの唄〉を思い出さない人はいないはずだ。

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