Thursday, November 10, 2022

[著者来店]「尚、赫々(かくかく)たれ 立花宗茂残照」羽鳥好之さん…老将が顧みる「関ヶ原」 - 読売新聞オンライン

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 今年6月、38年勤めた出版社を63歳で退社した。「あと2年で会社を去ると分かったときショックでした。その後を余生にはしたくない。コロナ禍でぽっかり時間も空き、散歩しながら必死に今後のことを考えた」。老舗小説誌編集長など文芸畑が約20年と長く敏腕編集者として知られたが、元々は歴史好き。一念発起し、歴史小説を書き上げた。

 寛永8年(1631年)。31年前の関ヶ原の戦いで敗れた西軍につき一度は浪人となった立花 宗茂むねしげ は、将軍家に認められて旧領を回復し、江戸で晩年を送っていた。平穏を破ったのは若き将軍、家光の命。尊敬する祖父、家康が関ヶ原の戦いで勝てた理由を、敵陣にいた自分に戦国の生き残りとして教えてほしいという。

 最初に「一番ドラマチックな『関ヶ原』を題材に」と思い立ったが、新人が書き尽くされた話に正面から挑んでも敬遠される。天下分け目の戦いを後世から探る形にしたのは、浅田次郎さん、桐野夏生さんら多くの作家を担当してきた編集者目線あってのこと。歴史を推理する 醍醐だいご 味を、幕府の人間模様や武将らの交友関係を背景に活写し、数奇な人生を送った千姫を通して戦の世に 翻弄ほんろう された女性の悲しみも浮かび上がる。

 初の小説とは思えぬほど、品のある文章も印象的だ。「歴史小説が積み上げてきた美しい文体を残しながら、若い人に読んでもらう工夫をする。それが一番難しかった」

 戦国時代に西国無双の武名を響かせた宗茂は本作の終盤、苛烈に社会を変えようとする家光に危険を顧みず 諫言かんげん し、老いの炎を燃やす。「老後の人生をどう充実させ生きたらいいのか、多くの人に関心が高いテーマを、自分を顧みて描いたつもりです」。島原の乱など、その後の宗茂も描きたいという。(早川書房、2200円)佐藤憲一

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