高校野球・名将たちの履歴書
第5回 高嶋仁(智辯和歌山)
152の島々からなる長崎県五島列島のなかで最大面積を誇る福江島。海、山、空が織りなす美しい風景に特産の椿が香るこの島が、高嶋仁の故郷だ。
終戦翌年1946年の5月、一家の期待を背負い長男として生まれた。父は製氷機を設置する技術者。ただ、高嶋のなかに残る五島時代の記憶は、常に貧しさが蘇る。
福江市立福江中学で野球を始めると、3年夏の大会では島に続き、県を制覇。島始まって以来の快挙を実現したのが、急造エースの高嶋だった。
もともとは長嶋茂雄ファンの”サード・高嶋”だったが、夏の大会前にエースのケガで投手を任された。本人曰く、「ストライクは入らんけど、試合が終わったらなんか勝っとる。そんな投手だった」ということだが、生来の勝負強さを発揮した。
中学最後の大会で勝つ喜びを知ると、「オレは野球で勝負する」と心を決めた。
しかし、家には歳の離れた弟が二人おり、島を出るとなれば金がかかる。悩んでいた高嶋の背中を押してくれたのが母だった。
「お金のことは心配するな。やりたいようにやったらええ」
高嶋が進学先に選んだのは、長崎市内にある私立の海星高校。高嶋が中学1年の夏に初めて甲子園に出場し、中学3年時には春夏連続出場。当時、長崎でもっとも甲子園に近く、勢いのある学校だった。
入部当初は1年生だけでも100人以上おり、人数を減らすため、練習中はひたすらグラウンドの外を走らされ、先輩からのしごきも待っていた。理不尽な扱いを受けるたびに辞めたくなったが、そのたびに母を思い出し「くそったれ! こんなヤツらに負けてられるか」と、歯を食いしばって耐えた。
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May 12, 2020 at 09:31AM
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