オリオールズFAの藤浪晋太郎投手(29)が27日、スポニチの独占インタビューに応じ、メジャー挑戦1年目を振り返った。最先端のデータ収集と分析が進む米国球界で発見した強みは“岩崎ボール”。阪神時代の先輩左腕と同じ特徴を持つ低いアングルから浮き上がるような直球で強打者をなぎ倒していくつもりだ。
(聞き手・惟任貴信、遠藤 礼)
――甲子園での惜別会見から1年
「そんなに経ちますかね。月並みですけど、早かったですね。あっという間の1年でしたね」
――当時は挑戦する気持ちが
「挑戦する、飛び込んでみたいという気持ちが強かったですね」
――1年前も今も所属チームは決まってない。心境に違いは
「チームが決まってないことに関しては変わりないですね。昨年も今年も決まるだろうと。不安視はしてないですね。どこになるかなぐらいの」
――メジャー1年目で思い通りにできた部分とできなかった部分は
「できなかった部分が圧倒的に多かったですね。元々、めっちゃ良い成績残せるとか自分にそんなに期待してなかったので。数字的にもうちょっとできたなとかありますけど、その時のベストは尽くしてるので。数字的には良くなかったですけど、飛び込んだこと自体成功なので。数字に関しては失敗だとは思ってない。うまくいかなかったこともありますけど悲観せずにそれも経験だと思ってましたね」
――1年間ケガなくできた
「そうですね。1年間、土俵に立ち続けたというのは良かったと思いますね」
――故障の危機は
「ちょこちょこありましたよ。腰の張りとかでIL(故障者リスト入り)まではいかないですけどベンチを外れたり」
――アスレチックスでは先発で苦しいスタート
「もちろん気分は良くないし落ち込むこともありましたけど、日本のみなさんが思ってるより落ち込んではなかったですね(笑い)。当時、日本から励ましのLINEもたくさん来てて。どんな報道のされ方してるんやろうと(笑い)。やっぱり行ってみないと分からない経験じゃないですか。アメリカのマウンドに立って初めて打たれる、打たれないがあるので。日々、これも良い経験だなと思ってやってました。めちゃくちゃ病んでたわけではないですね。次、どう頑張ろうかなと前向きな気持ちになってましたね」
――結果が出なかった時に首脳陣と話し合いも
「彼らが一貫して言うのは“フジ、なぜそんな自信なさそうにしてるんだ”“100マイルを投げて90マイル超えるスプリットを投げてなぜ自分のことを信じてないんだ。チームの中でお前が一番自分のことを信じてないじゃないか”と。打たれてる時もずっと言われましたね」
――考え方の根底が日本とは違う
「全然違いますね。“あそこはダメだったな”とかじゃなく、打たれても次どうする?失敗なんか誰でもあるだろうと。おべんちゃらで言ってるわけではなく、本気でそう思ってる感じで。日本だと打たれたら塩らしくしてないといけない雰囲気があったりしますけど、アメリカはどんどんストライクゾーンにアタックしていけよという空気ですね」
――打たれても責められない
「1点差で登板して打ち込まれて逆転されました。ただ、ストライクゾーンにカウント有利に投げてると、ベンチに帰っても握手されて投手コーチにも“グッジョブだった”と言われるです。ゾーンにアタックしてやるべきことはやったじゃないかと。今日は相手が良かったからで、打った打者にハットオフ(脱帽)しておきなさいと。明日も継続してやってくれという感じで終わりますね」
――失敗に対して寛容
「トライして失敗したんだから、それを生かして次はより良くトライしようというスタイルに励まされましたね。気持ち的にもすごく楽でしたね」
――カルチャーショックだった
「衝撃でしたね。そんなあっさり見てくれるの?と思いましたね。監督、コーチだけでなく、同僚も同じような声のかけ方でした。文化というかアメリカのトライする精神を感じましたね」
――そのような土壌でプレーして新しい自分の強みは見つかったのか
「データ上は直球を高めに投げておけば打たれない、被打率1割台とかデータで示してくれますし。高めに直球を投げ続ける発想は今までなかったので。とりあえずアバウトでいいから高めに直球を投げるというスタイルは発見でしたね」
――球速も上がった
「トレーニング自体は変えてないので、周りに触発されたのはありますね。100マイル投げる同僚がたくさんいるので。今まで破られてなかった世界記録が塗り替えると、そこからどんどん更新されていくのと一緒なのかなと。100マイル出そうと思ってないですけど、自然にそうなってしまいますよね」
――日本より迷いなく投げてた
「やっぱりデータ重視なので。すごい膨大な蓄積されてるビッグデータがあるんですけど、細かくなるじゃなく突き詰めるとシンプルになっていく。ここが弱いからここを攻めようと。ボールが指先から離れた後は何もできないだろうと。そこから先はお前の仕事じゃないという」
――打たれても引きずることがない
「何ならゴロヒットは仕方ないという考えですね。アンラッキーだったね、と。打球角度付けられてのホームラン、長打は何かミスしたねと」
――その境地になじむのは時間かかった
「そうは言いつつも疑ってたんで。5月ぐらいに気づけた感じですね」
――メジャー用にスイーパーも準備した
「“それよりもお前は直球とスプリットだろ、と。その2つでメジャー契約を取ったんだろ。なぜそれで勝負しない?”という感じでした」
――初球でストライク取れるかを意識した
「取れるか取れないかで圧倒的に被打率が変わってくるので。そのバッターが初球に強いとかなら別ですけど、データが頭に入っていてストライクを取りに行って打たれても責められることはないですね」
――日本にないようなデータもあるのか
「いっぱいありますよ。日本にないデータもありますし、それを生かし切れてないデータもありますね。データはどう処理するか、捉えるかで変わってくるので。たくさんアナリストがいて、投手コーチもデータを理解してます」
――新たな強みも見えてきた
「平均球速はそうですけど、角度のなさじゃないですかね。岩崎さん的な。身長の割にリリースポイントが低いのが特徴ですね」
――角度の無さとは
「バーティカルアプローチアングル(VAA)というデータがあって。ボールのリリースから捕手のミットに収まるまでどれだけの角度が下がったか。0に近づくほどライズボールになって空振りが取れます。自分はVAAがフラットなんです。ホップ成分は多くないですけど、バッターからしたら高めに来たら伸び上がっているように見えます」
――それが強みに
「VAAは例えば才木みたいに上から投げれば投げるほど回転軸も安定してホップ成分のあるボールが投げられるけど、角度がつく。逆に低いアングルからなげればホップはしにくくなるけど、角度がないから浮き上がって見える。岩崎さんの何がすごいかと言うと、それを両立してるんです。オーバースローなのに低いアングルで投げてるイメージ。バッターからすれば見たことないボールが飛んでくる。本来、その角度からボールが来ればもっと“たれる”はずなのに浮き上がってくる。低いアングルという意味では自分は岩崎さんタイプなんです」
――それは意外
「角度がないし、球速もあるので、より高めに投げなさいということで。データで言えばそういう特徴なんです。自分は歩幅も広いので、より前で離してるのでマウンドの傾斜で角度がつかないのもありますね」
――岩崎のすごさも分かる
「岩崎さんはリリースが低い、沈み込むタイプのフォーム、ストライドが異常に長い。メジャーのデータ上で言えば、高めに投げておけば永遠に打たれないピッチャーです」
――アングルが低ければ良いわけでもない
「平均からどれだけ逸脱するかですね。VAAはだいたいマイナス5度から7度と言われますが、自分は平均4・3。岩崎さんはもっと低いはずです」
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