2月3日、サードウェーブから新たな「eスポーツ部発足支援プログラム」が発表された。3期目となる今回は、ゲーミングPCやモニターのみならず、NTTの光回線とルーターもセットになっており、eスポーツ部の運営に必要不可欠なハードウェアからインフラまでまるっとサポートされるところが最大の特徴となる。
【GALLERIA eスポーツ部発足支援プログラム 導入校 事例】
新たにeスポーツ部の設立を目指す、あるいは設備の拡張を考えている日本全国の高等学校にとって画期的な発表と言えるが、2月3日の発表当日は、サードウェーブも協業パートナーとして名を連ねたNTTe-Sportsが設立記者会見が開催された日で、サードウェーブも会見場に専用ブースを設け、新たなeスポーツ部発足支援プログラムをアピールしていたが、NTTe-Sports設立のインパクトの大きさに若干埋もれてしまった印象がある。
そこで今回は、サードウェーブでeスポーツ事業全般を担当している取締役副社長の榎本一郎氏にインタビューを行ない、新たなeスポーツ部発足支援プログラムの意図と、新たな協業パートナーとなったNTTグループとの提携について話を伺った。
なお、NTTe-Sportsの発表内容については、別途詳しくお伝えしている(参考記事)ので、そちらも合わせて参照いただきたい。
eスポーツの盛り上がりと、新たなeスポーツ部発足支援プログラムについて
――2020年の「eスポーツ部発足支援プログラム」の内容を拝見させていただきました。NTTさんとの業務提携による「サードウェーブ光」など3年目にして意欲的な内容になっていると思います。今回は刷新された「eスポーツ部発足支援プログラム」の設計思想と、NTTさんとの協業の内容について話を伺えればと思います。
榎本氏: 今回は、取材というよりは、久しぶりに中村さんとゆっくり話せるので、楽しみにしていました。中村さんから見て、サードウェーブとeスポーツはどう見えていますか。
――おもしろくなっていると思います。いわゆる“eスポーツ元年”からしばらくたっても勢いが持続している。これは過去のパターンにはなかった展開だと思いますね。細かいところではいろいろ問題もありますけど、日本でeスポーツを広げたいという想いを持つ皆さんが一丸となって勢いを持続させているという感じがあって心強いです。たとえば、NTTがeスポーツの専業会社を設立する(参考記事)なんて、数年前までまったくありえなかった話だと思うんです。そういうことが現実になっている。これは“過去のeスポーツ元年”との大きな違いですよね。
榎本氏: そうですよね。
――榎本さんがサードウェーブに入社する前には、まだ世間的にはeスポーツの「e」の字もありませんでした。そのときも実際にはeスポーツは存在していて私は今と変わらず取材に出かけていましたが、世間的な認知はまったくありませんでした。
榎本氏: そうですね。
――そういう世界を知っている人間からすると、やっと世間に認知され、その魅力、効能、あるいはネガティブな側面も含めて真面目に考えてくれるようになったなという感じはあります。日本のゲーム関係者の皆さんがeスポーツに対して真面目に向き合ってくれるようになったということが何よりも嬉しいですよね。
榎本氏: 真面目になってくれたと(笑)。元々真面目にやっていたサードウェーブはどうですか?
――尾崎さん(尾崎健介氏、サードウェーブ代表取締役社長)が2010年に秋葉原PCゲームフェスタをはじめた頃からその取り組みは追いかけているつもりですが、そのPCゲームフェスタもある意味で伝説級のイベントでしたが(笑)、何をやりだすかわからないという点で今が一番おもしろいのではないでしょうか。
榎本氏: おもしろいですか(笑)。では、eスポーツはポジティブに見えていると。
――はい、見ています。全面的にポジティブかと言えば一概にそうではないと思うのです。たとえば、風営法の問題だったり、プロライセンスの問題であったり、高校生で言えば学校間の情報格差、スポーツの機材としてのゲーミングPCの高額さ、色々あると思いますが、そうした中でそれぞれの分野で「なんとかならないだろうか」と知恵を絞っている方々がいらっしゃるというのは率直に言って以前と比較すると素晴らしい状況だと思います。
その中でも目下もっとも大きなチャレンジは、先日JHSEFの久保理事長(JHSEF理事長 久保公人氏)にインタビューさせていただいた際にも同じような話になったのですが、どのようにして親の理解を得るか、親から「ちゃんとeスポーツやりなさい」という状況を醸成していくか、ここだと思っています。今はまだ、「eスポーツ? いつまでもゲームで遊んでないで勉強しなさい」ということになりがちです。
榎本氏: そうですね。我々サードウェーブは「先頭を走っている」とまでは言いませんが、少なくともeスポーツの先頭集団の中に会社としてはいると思っています。私が入る前から会社としてeスポーツに関する取り組みは行なっていましたが、私が入ってからは、より世の中に働きかけるというか、提案する製品、仕掛け、アライアンスを、eスポーツに関わってきたことのない人に対して、どう横に広げていくのか、総合的な所にどうアプローチできるのかを一生懸命考えてきました。
――はい。そうですね。
榎本氏: ただ、やはり前例がないので、eスポーツは難しいんですよね。例えば、今ハードウェアとプログラム、タイトルの親和性、連携性が。プラットフォームでいうとコンソール機、PC、モバイル、スマホであったり。どれをとっても、どういう切り口であってもどれもが「eスポーツ」なのですが、関わる人のカテゴリでいうと、全く自分は門外漢であったり、関係なかったりというところがあるんです。
たとえば「野球」で言えば、みんな同じ「野球」を連想します。でも、eスポーツの場合、いろいろなタイトルが連想されてしまいます。eスポーツの定義そのものも「エレクトロニックスポーツです」とは言いますが、それは辞書的な定義であって、体感的な定義はまだ何もないですよね。これは日本だけではなくて、グローバルで見ても、これという正解がない。これではまたブームで終わってしまう。以前にも言いましたが、ブームではなく、文化にするために、高校生の為の選手権の開催や、eスポーツ発足支援プログラムをサードウェーブは始めました。部ができればきっとeスポーツは文化になるということを確信していますが、「難しいところをいっちゃったな」と自分でも思っています(笑)。
――よくわかります(笑)。
榎本氏: それでようやく本題であるeスポーツ部発足支援プログラムの話になりますが、第1回全国高校eスポーツ選手権の時に、3年間無償でPCを高校に貸し出す支援プログラムをスタートさせて、「eスポーツというのは本当にやって良いのだろうか?」という根本的な問題を抱えながら、恐る恐る高校生のみんなが立ち上がって頑張って部を作ってくれたのが78校でした。
次年度のプログラムは、2年間無償で、1年間だけ支払いをしていただくかたちになりました。これには理由があり、サスティナビリティ(持続可能性)を担保するためです。ずっと無償でサポートができれば良いのですが、いつか破綻してしまう可能性があります。支援プログラムを長く続けるために、ある一部は有料化していかなければならないと判断しました。これは商売ではなくて、プログラムを持続していくために、多くの高校に支援をし続けるためです。
2年目は約40校増えて、1.5倍にはなりましたが、私たちが目標にしているのは4千数百校なんです。そこから考えるとまだ全然少ないんですね。
――4,000校というと、全国の高校のほとんどすべてですね。
榎本氏: それは難しいので、せめて半分、2,000校ぐらいは広げたいという思いがあります。この数字目標は、部活支援プログラム設立当初からありました。
――つまり、最初から2,000校だったと。
榎本氏: そうです。最初から私たちサードウェーブは2,000校を目標にしていました。その2,000校を基準に、どのような形の支援であれば、限りある原資の中で何年間安定したサポートをし続けられるのだろうかと考えました。結果、より多くの学校を支援するためには、一定期間無償後から有償と致しました。
また、その数にするにはまだまだ耳にする、eスポーツへの誤解や偏見を払拭する必要があります。大会を観にこられた自治体の方や、先生方は「eスポーツは良いものだ」と言ってくれます。現場を見て、高校生が泣いて、親御さんたちが応援をして喜んでいる姿は感動しますし。「リアルスポーツと変わらないよね」と。来た人はポジティブですが、実際にeスポーツを知らない人がまだまだ大多数です。その人たちの声で一番大きいのは「本当にやって良いものなのかどうか」。ここを解決したかった。
そこで、選手権を共催する毎日新聞社さんと協力して、JHSEF(ジェセフ:一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟)を設立しました。公器としての主な活動はアメリカのNASEF(ナセフ、北米教育eスポーツ連盟)と連携して、高校生がやるべきカリキュラムであるのかどうかの精査、理事としてご参加いただいている医学界の方達によるeスポーツと健康医学の検証です。
カリキュラムというと勉強みたいですが、そういったことを一生懸命、課題解決に向けての発信をしていくのが、いち私企業ではなく公的な機関からであることが重要だと思いました。また、久保理事長を中心に、教育関係者の方々に対し、eスポーツの良さを投げ続けていくことで、現在世の中にある誤解や偏見の払拭に繋がっていけば良いと思っています。
そしてもう一方で、「榎本さん、eスポーツはご存じのようにハードウェアだけでは試合ができません」と。すなわち、回線をどういう風に学校に引いていくのかと。ここも部活動発足時の課題ですね。そこで先日発表した、eスポーツ部発足支援プログラム第三弾が誕生したのです。新プログラムはPC3台と回線をセットにしました。
――今回は回線がセットというのがおもしろいですね。
榎本氏: 回線自体は、eスポーツ部発足支援プログラムを始めた時、PCだけではなく、回線を引くのがネックになっているという話を一部の先生からお聞きし、ずっと心にに凝っていました。また、今後大会が大きくなれば各地域での予選大会が絶対に必要になります。
そこで全国規模で展開でき、かつ地域による優劣のない回線ということを考えると、NTT東日本さん、NTT西日本さん(以下、NTT東西)の回線が最適という判断に至りました。
――なるほど。
榎本氏: 理想を言うと学校同士が、同じ機器と環境で戦い合って、予選大会から決勝大会までを全て同一でしなければならない。不公平のない、言い訳のできない環境を整えてあげるべきです。同じ種目でやるのであれば、同じような環境でやってもらいたいんです。
話はそれますが、先日、NTT東日本さんがeスポーツに特化した会社、NTTe-Sportsさんを設立されましたよね。記者発表会にも同席しましたが、新会社はeスポーツの大いなる発展に繋がると期待しています。eスポーツの競技施設の開業や、学校のプラットフォームに対してのコンテンツサービスの開発など、NTTe-Sportsという新会社と様々な協業の可能性があります。
今後学校でのeスポーツの部活動がどんどん広まった時に、学校からのニーズでコーチがほしいとか、eスポーツ早期上達のためのAI分析の利用とか、夢が広がりますね。この間、東京都のeスポーツフェスタで、デモンストレーションとして「ぷよぷよeスポーツ」のAI配信を見ました。担当の方にお聞きしたら、好適な手を打った場合、何ポイントを撮れるのかといった分析もできるようになると。
――配信にAI技術を使うのはおもしろいですね。
榎本氏: AIの分析と言えば、囲碁・将棋の世界がそうですよね。将棋はまだいろいろな手があって、AIより人間が強い場合もありますが、囲碁はもうコンピューターが圧倒的に強いです。だから「ぷよぷよ」の様な、ある程度「ここに置いたらこうなる」というのが決まったものに関して言えば、コンピューターの方が強くなって、逆に言うとマニュアル化をしやすい。どうやったらうまくなるか、どういう手を考えるのが正しいというのを教えやすい。
もっと広げると、それが「ロケットリーグ」、「リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)」といった、今我々が大会で採用をしているタイトルも研究が進めばあり得るかもしれない。「こういうキャラクターで、こういう配置で、こういうポイントを持っている時にはこういう動きをするのが一番良い」とか「こういう攻撃が効果的である」といったAI的なサポートとかエディケーションツールとしてマニュアルで教えることができる。それに人が加わって安価にコーチングができるかもしれません。
今は人手不足で、eスポーツを教えられる人が少ないです。リアルスポーツではその競技の先生になりたい、たとえば水泳を教えるために学校の先生になったという人はいますが、eスポーツではまだまだ少ないですからね。
――体育大学を出て体育の先生になる人はたくさんいますが、eスポーツではそういうパス自体がないですからね。
榎本氏: そうです。野球だってプロになれなかったけれども、大学までやって、高校の母校に帰って教えたいから、教師の免許を取った人はいっぱいいます。eスポーツはまだそういうことはないですよね。そういうのもプラットフォームができあがっていく中でのコンテンツとして、eスポーツ新会社でできる可能性もあるかもしれないと思っています。
高校のeスポーツを文化にすることが、日本のeスポーツ業界にとってもすごくポジティブだという理念のところで、NTTさんと意見が合い、これは是非アライアンスしたいなと思いました。
――AIを使ったコーチングというのは非常に興味深い話ですが、これはいつぐらいの導入を考えている話なのですか? 凄くおもしろい話ですが、今すぐというわけにはいきませんよね?
榎本氏: 簡単なゲームであれば現時点でもそういうことができますが、それが高校生eスポーツに採用されているわけではないので、まだ少し時間が掛かるでしょうね。でもそんなに遠い将来の話ではないイメージです。
――AIを使ったコーチングシステムは、2,000校の参加を目指すための施策としてはインパクトがありますね。
榎本氏: そう思ってます。その開発環境の整備も含めて、サードウェーブはNTTe-Sportsさんといろいろなアライアンスを将来的にも考えていきたいと思っています。
3年縛りなし! 新たなeスポーツ部発足支援プログラムのディテールについて
――新たなeスポーツ部発足支援プログラムの詳細についてお伺いします。新たなプログラムではPCが5台から3台になりますね。これは「ロケットリーグ」種目での参加者のために、きめ細やかなサービスをするということですか?
榎本氏: これも高校から要望を頂いて。実際、「ロケットリーグ」の種目しか参加しない学校が5台レンタルされても困るんですね。
――2台を持て余してしまいますよね。
榎本氏: そうなんです。学校によっては将来的には無駄な投資になってしまいますから、無駄なコストが学校にかからないようにするためです。あとは、オプションで何台でも広げられるように、1台単位で追加できるようにします。それが、デスクトップが良いとかノートPCが良いとかという需要もあるので、各校の規模や要望に柔軟に対応出来るようにしました。
――2020年のプランでは、1年が経過したらその後は有料になるんですよね?
榎本氏: そうです。ただ、これまでと大きな違いが「3年契約ではない」というところです。つまり、「2年目に返してくださって結構です」ということです。前回までのプログラムは3年のパッケージを3年間無償にします、2年間無償にして1年有料にします、という形でしたが、今回は3年というしばりをなくしました。
――つまり、1年経って、無料期間が終わって返しても構わないと?
榎本氏: そうです。常に最高のコンディションのPCを置くことができる月額2万円コース、または買取コース、そして返却も可能で、3つから選ぶことができます。今までのプログラムにあった3年縛りでも何でも無いです。
――ではとりあえず借りて、“試しにeスポーツ部をやってみる”ということができるんですね。
榎本氏: 元々、部活は作ったらなくならないと思っているんですが、作ること自体が高いハードルだと今は思っています。
昨年のプログラムでは、3年間のうちの1年を有償にして、その1年分を学校で準備してくださいというのが義務でした。でもこのスキームだと、学校内で稟議書をあげる際に、その1年分の費用をどうやって払うのかということを最初に考えないといけない。そうなると、その1年分がかえって重石になってしまう。どのみちお金のことは考えていただかなくてはいけないんですが、とりあえず1年間無償にして、その間に先のことを準備することができます。これは凄く大きな違いです。
我々としては多くの学校に月額モデルを選択していただきたいと考えていますが、その際、何がバリューなのかを明確にしています。ゲーミングPCの分野では。3~4年に1回の割合でハードウェアが陳腐化する場合があります。平等なプラットフォームを作りたいというのが、サードウェーブの想いなので、3年経って使えないとか、その時に競技種目に選ばれたタイトルが動かないPCだとしたら、部活支援でもなんでもなくなってしまいます。
――確かにそうですね。
榎本氏: PCのバージョンアップが必要な時には、サードウェーブ負担で機械を最新のものに入れ替えるという料金まで含まれています。月額モデルを選んでもらえば、回線とハードウェアと全部セットで月2万円になります。
――ある意味、将来にわたっての保障もついているということですよね。
榎本氏: そうですね。ゲーミングPC 3台、ゲーミングモニター3台、そして回線もセットです。回線はルーターもついていて、プロバイダーの契約も付いています。
――ぶっちゃけな話になりますが、これで2万円として利益は出るのでしょうか。
榎本氏: ほぼ出ないです(笑)。
――ですよね(笑)。これはどういうビジネスなのでしょう?
榎本氏: 例えば、3年後に機械を入れ換えざるを得ないとしますよね。古いものを引き上げて中古で販売します。サードウェーブはレンタル部門も持っているし、引き取った後中古PCを販売するドスパラというチャネルを持っている。だから経済的にはギリギリ成り立つんです。
――なるほど。グループの強みを活かすことで、なんとかビジネスとして成り立つということですね。
榎本氏: そうですね。とにかくぎりぎり赤字を生まないぐらい、儲けないといった方が正しいかもしれません。でも、これが広まってくれて1つのプラットフォームになったら、これそのものがうちにとっては大事なマーケティングツールでもあるし、それこそNTT東西さんやNTTe-Sportsさんと一緒に魅力的な付加価値を提供できるかもしれない。たとえば、月々+500円でコーチングが受けられますとか、ショートターンで希望する何回かだけはコーチが低額で受けられますとか、そういうことも考えられます。
――第1回、第2回の全国高校eスポーツ選手権を取材していて感じたのは、コーチングの重要性です。学校間の情報格差がどんどん大きくなっていると感じています。例えば、第2回「LoL」部門で優勝したN校と、今年eスポーツ部を設立したばかりの高校とでは、選手の厚み以前に、情報格差がありすぎるように思いました。N校はeスポーツにおいて名実共に最先端の情報にアクセスできる環境があり、練習の密度から何からすべてが全然違います。
これだけ格差ができてしまうと、仮に同じだけ練習時間をかけても差が縮まることはないと思うんです。この情報格差を埋める工夫を主催者、活動をしている中心の方々が埋める努力をしないと、まさに公平性が担保出来ないと思います。「今更やってもN校に勝てないからやったって仕方がない」となってしまえば、これ以上の盛り上がりはなくなってしまいます。そういった面でいえば、AIを使ったコーチングというのは画期的なアイデアだと思います。
榎本氏: まだ、商品化はできていなくて構想レベルのお話ではあるんですけどね。ぜひ実現したいと思っています。
――ただ、eスポーツ界の人手不足をAIが補う流れは必然だと思うんです。すでに問題意識を持って、すでにその動きに取り組まれているというのは素晴らしいことだと思いますね。
榎本氏: ありがとうございます。いろいろと先々の事も考えています。ただ、ベースにあるのは「文化にしたい平等であること」というのが常にあるので、それをどう提供できるかを検討する上で、サードウェーブの理念に合致した企業の方たちとお話できる機会が多いのは、とてもありがたいです。多くの企業と話して実現したひとつの形が全国高校eスポーツ選手権で、高校生たちが活躍して喜んでくれる、多くの方達が喜んでくれた。
ずっと言っていますが、サードウェーブだけでは提供できないサービスや、物理的に実現できないことが多々あります。悲しいけれども真実です。具体的に「何が良い」とか、こんなことを始めました、ということを、こちらからどんどんアプローチして実現してあげなければ、自治体や高校の中の人たちも動きづらいと思います。そういうことをサポートできるようにしたいです。今回のNTT東西さんとのアライアンスは、将来的にみてもサードウェーブにというよりも高校のプラットフォームを平等にしていくためにも絶対にプラスに働くと思います。
サードウェーブ光はドスパラで契約できるようになるのか!?
――私も地方出身だからよくわかりますが、地方は回線が貧弱な地域が多いんですよね。この2年間、「eスポーツ部発足支援プログラムを利用したいんだけど、回線のアテがないからどうしようもないんです」という相談は多かったのではないですか?
榎本氏: ありましたね。これまでに導入された高校は、なんとか工夫されて回線は引かれているんです。プログラムを利用されて、回線がなくて活動できてないという学校さんはいらっしゃいません。ただ、事前のご相談では、「何を引いていいのかわからない」、「回線を引けるかどうか定かではないから、部活支援プログラムを申し込んでも果たして使えるかどうか……」といった話はありました。
――PCだけあっても回線がなければと?
榎本氏: そうですね。回線はハードルが高いんです。学校から見ると、eスポーツ部を作ろうとすると、いろいろな所にアプローチしないといけないこと自体もハードルになっているんですね。やはり設備投資ですから大変です。
――PCを用意すればどうにかなるというものではないということですね。
榎本氏: 先生の手間が多くて、それが情報学科の先生なのか、eスポーツの部長さんなのか、誰かがやらないといけない。ワンストップではないんだなというのは感じましたね。
――ちなみにこのサードウェーブ光は、回線をサードウェーブさんから卸すのですか?
榎本氏: そうですね。西日本・東日本がうちに卸します。うちが買って学校に提供します。
――つまり、サードウェーブは回線事業者になるんでしょうか。
榎本氏: そうですね。
――これは、サードウェーブさんとしては大きなパラダイムシフトですね。
榎本氏: コンシューマーでは売っていないですからね、光コラボは。
――これまでは、様々な回線サービスを紹介するだけでしたが、今後はサードウェーブ自身が回線を販売できるわけですね。
榎本氏: そうですね。
――サードウェーブ光の対象はこの支援プログラムの中だけなんでしょうか。それともドスパラなどでGALLERIAを買う時に、サードウェーブ光を選択することは可能になるのですか?
榎本氏: まずは学校だけです。支援プログラムの利用校限定です。
――すでに第1回、第2回の支援プログラム利用校は、新たに回線のみの利用も出来ますか?
榎本氏: 利用できるようにしようと思っています。
――対象エリアはどこからどこまででしょうか?
榎本氏: 全国です。ただ、問い合わせをいただいて、申し訳ないですがここだけは回線が無理ですという場合もあります。NTT東西さんによれば、全国で97%は大丈夫だと言われていました。
――サードウェーブ光は、将来的にGALLERIAの購入時にセットで契約できるなどの、サードウェーブのビジネスにも繋げていきたいと考えていますか? それとも完全にeスポーツに特化した、eスポーツのみに提供をしていくサービスですか?
榎本氏: 今のところ考えているのは、高校での部活動のみです。NTT東西さんは、もしかしたらドスパラで販売して欲しいのかもしれない。しかし、「高校に対する施策、ここだけで価値があります」と。榎本さんが考えている高校のeスポーツ文化を定着させるのはすごく良いことだと言われました。
会社のためにやっている事業はサードウェーブにもたくさんあります。もちろん「お客様のため」なのですが、その前に会社のためですよ。だって、途中で継続できなくなって、極端な話会社が倒産してしまうようなビジネスモデルだとしたら、最終的にお客様に迷惑をかけてしまうからです。
サードウェーブが今やっている、この、高校を対象とした取り組みに関して言えば、例えば2,000校に貸し出しをしました、翌年1,000校返ってきましたとなれば大赤字です。でも潰れないだけの他の事業があるので、残った1,000校で文化になって、「やっぱりまたサードウェーブを活用した方が良いね」となれば、「いったん返したけれどもまたもう1回使いたい」ということも起こり得るわけです。
このeスポーツ発足支援プログラムに対する想いは本当に、eスポーツを高校の文化にすることが第一義にあります。そして何度も言いますが「平等」ですね。高校でのeスポーツ部の部活動が一度中断しても、次の生徒がまた部活動を立ち上げたくなったとき、この取り組みがなくなっていたらもう部活動が出来ない。それは全ての高校生にとっての平等ではない。ですから、いつまでもこのプログラムを継続できるようにしないといけないと思っています。
――サードウェーブ光は、短期的な商売としてではなく、高校生たちの文化のためにやっているところが大きいということですね。
榎本氏: そうですね。ここで少しドライブしたいところです。
サードウェーブ光を取り入れたeスポーツ部発足支援プログラムの強みとは?
――ちなみに○○光というサービスは学校向けにたくさん提供をされています。サードウェーブ光のそれらと比較してのアドバンテージは何かありますか? 先ほどうかがったAIであったり、コーチングなどは将来的にはありますが、それ以外に例えば価格やスピード、アフターサポートなど、何かありますか?
榎本氏: 価格に関しては、これはハードも込みなので。そういう意味では、PC3台とルーターもセットで2万円となると多分どこにも負けないプライスだと思います。
――アドバンテージは圧倒的な価格だと?
榎本氏: 圧倒的ですね。光そのものは同じなので、回線の品質は変わらないです。ですから当社のだけが良いということもありません(笑)。後は提供できるコンテンツサービスのところはオリジナルですから、サードウェーブが考えて、もちろんNTT東西さんやNTTe-Sportsさんからのご提案も受けるでしょうし、それ以外の企業の方たちからもご提案を受けることもあると思います。当社の施策を魅力に感じてくれた方が、さらに「高校のためにこういうことが必要ではないでしょうか」といった提案は広く求めたいです。これはNTTさんと我々だけでやるためのプラットフォームではないので。
――なるほど。例えば、岡山共生高校がある新見市は、ソフトバンクと提携して全市に光回線が引かれています。ああいった実験的なエリアの学校でも手を挙げることはできるのでしょうか。
榎本氏: できます。
――ソフトバンクとNTTの回線が学校内に混在するような契約も可能なのですか?
榎本氏: 可能です。現時点でも学校によっては、教室単位で引いている回線が違っていたりもします。今でもすでに光回線は入っているけれども、eスポーツ部用に引きたいというのはありだと思います。
――つまり、eスポーツ部のための専用線が引けるということですね。
榎本氏: そうです。2万円のパッケージを使いたいのであれば他の回線が入っていても大丈夫です。学校に向けてハードと全部セットで、サブスクリプションで提供をしているものはないと思います。
――学校の学校側の反応が楽しみですね。
榎本氏: そうなんですよ。「やっと回線もセットになった」といった声もあるかもしれませんね。NTT東西さんと当社が組むもうひとつの理由は、より公器なものにしたいというものがあります。サードウェーブは私企業なので、部活支援といってもどうしてもビジネスっぽく聞こえてしまうので。
その点、NTT東西さんは全国にネットワークをきちんと持っていて公共性も高い企業です。高校から見ても、稟議書にNTTとあれば、「NTTって何?」といった、変なクエスチョンは生まれないですから。そういう会社が、高校eスポーツ文化を醸成するのに、サードウェーブの部活支援は良いものであると言ってもらえてコラボができると言うことは当社にとっては非常に良いことだと思っています。
回線は絶対に止まってはいけないものなので、思いつきでできたようなプラットフォームではなく、安定的で安心感のあるサービスでないといけない。そういう意味では、責任のある大企業のNTT東西さんと、サードウェーブの安定感のあるハードウェアとが合体して高校現場に広がっていくことがすごく良いプラットフォームになると思っています。
――ちなみにこれは何セットでも無料なんですか。
榎本氏: 1キャンパス1セット無料です。
――現時点で、初回に1セット5台、2年目も1セット5台で、すでに計10台借りている学校さんもあるようですが、さらに今年も申し込んでいいのですか?
榎本氏: 第1回、第2回ですでに申し込んでいる学校は、追加が可能かどうかお問い合わせください。
――あともうひとつは、「ロケットリーグ」はちょうど良いサイズですけれども、「LoL」勢としたら、あと2台足らないということになりますよね。オーダーメイドで借りる時には、初年度おいくらかかりますか。
榎本氏: デスクトップが1台4,900円、ノートが1台4,500円です。
――第1回目で78校、第2回目で112校。第3回でどれぐらいになれば良いと考えていますか?
榎本氏: 500校ですね。これはJHSEFの取り組みと、サードウェーブ光が提案されたことで、部の発足のハードルがグッと下がるからです。
――確かに、新しいプログラムでは、とりあえず1年間借りて、都合が悪くなれば返せばいいわけなので、レンタルのハードルはかなり下がりましたよね。
榎本氏: eスポーツ部を「まず作ろうよ」と。同好会でも良いから、その環境を作ろうよと。本当に嫌だったら返してくれて良いからと。ただあんまり返してくれて良いというと、そういう学校が増えちゃうかな。そうなったら「榎本がそういったからだ」と後で社長の尾崎に怒られますが(笑)。
――eスポーツ部の創設あるいは拡張を検討している学校さんに向けて何かメッセージはありますか?
榎本氏: 1回目の全国高校eスポーツ選手権のアナウンスの時に、同じタイミングで部活支援プログラムを発表して、その時には、私自身も高校に部ができて、ハードウェアを3年間無償で借りられたら、こんなありがたい事はないと、学校現場にも受け入れられて一気に広がるものと思っていました。しかし、発表後、締め切りまで3カ月くらいありましたが、78校程度しか部ができなくて、その思いは打ち砕かれ、「こんなに難しいのか」と改めて思いました。
学校教育現場で新しい文化を醸成していくことの難しさを感じました。先生方の普段の大変さ、校長先生の「やってあげたいけれどもできない」、あるいは「いろいろな自治体、省庁との関係があってできない」だとか。高校生たちもどういうアプローチをしていいのかわからない中で、すごく難しいことなんだと痛感しました。
2年目、サスティナビリティを考えた時に、一部有償化しつつ継続しますという宣言をして、「eスポーツは良いものだ、高校生たちがやりたいということをサポートしたい」という先生たちのおかげで、40校増えました。
サードウェーブはかねてより“eスポーツを高校の文化に”と言ってきましたが、現場の先生からすれば「簡単に言うなよ」、「高校の文化はおまえたちが作るんじゃないぞ」という風にお考えのところがあるかもしれません。だからこそ、今回の新プログラムを発表しました。より先生たちの負担、学校の経済的な負担を減らすために、NTT東西さんとタッグを組んで、工事費も送料もすべて無料、初期導入コストを0円で提供することにしました。お問い合わせいただいて、申し込みいただくだけで、導入に関わるご負担なく、部発足の最初の準備ができるようにしています。
サードウェーブには、全国の高校で、PCや回線など、eスポーツを戦う上で平等な環境を整えていきたいと言う理念があります。他にも、地域的な損失がないよう、コーチングを含んだ練習内容の充実なども今後の課題だと思っています。それが平等です。
他の国にあって日本にないものが仮にあるとしたら、それはネガティブでしかないと私は思います。それは平等ではないと思うんです。少なくともポジティブな教育に繋がるような、あるいはコミュニケーションに繋がるようなツール、コミュニティがないことの方が、絶対に正しくないと思っています。逆に言うと、コミュニティが増えることは正しいことだと思っています。
全国の先生からもっとご意見を頂きたいです。解決できるものであれば、一緒になって解決をしていきたいし、新しい提案であるとか、新しいサービスで補えることであれば是非やっていきたいと思っています。目標は、全高校生の生活の場に、eスポーツ部ができることが、願いであり、それが平等だと思っています。是非ご協力いただきたいと思います。
――最後に2020年の抱負をお願いします。
榎本氏: 2018年から、ずっと言っていますが高校生のための文化を作る、「eスポーツを日本の文化にする」、そのエコシステムの真ん中がユーザーだとすれば、それを構成するバリューチェーンの1社になりたい。この想いは、ずっと変わらずあります。私はバリューチェーンと言いました。2年前のGALLERIAの発表会の時に、バリューチェーンの絵を出して、つながることが重要なんですということを言いました。そのときは、毎日新聞社さんとうちが繋がることを誰も発想していなかったし、今回NTTさんとうちが繋がることも、あの当時では誰も予想もしていなかったし、私自身もそうです。でも今では全国高校eスポーツ選手権という形で毎日新聞社さんと繋がり、部活支援という形でNTT東西さんと繋がり、段々とeスポーツのバリューチェーンの中のひとつの輪の形ができあがってきました。
これから先も、何社かでタッグを組んで繋がることがeスポーツの文化の定着に必ず貢献できると思っています。なので、仲間をもっともっと増やそうというのが、今年の抱負でもありますし、高校生や学校関係者の方から見て、「サードウェーブは良いことをしてくれた」、「あれがきっかけになって、高校生の活躍の場が広がったな」と思ってもらえるような活動が2020年もできるように頑張っていきたいなと思っています。是非よろしくお願いいたします。
――これからの活動も期待しています。ありがとうございました。
"たれ" - Google ニュース
February 14, 2020 at 09:59AM
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