Monday, March 30, 2020

藪恵壹が語る、No.1の天敵とは?打たれた満塁弾、巨人との苦い記憶。(藪恵壹) - Number Web - ナンバー

『Sports Graphic Number』は創刊1000号を迎えました。それを記念してNumberWebでも執筆ライター陣、著名人による「私にとっての1番」を挙げてもらう企画を掲載します。今回は日米で活躍した藪恵壹氏に、これまで対戦したバッターとの秘話を語ってもらいました。ナンバーワンの“天敵”は誰?

 私にとっての最高のバッターはバリー・ボンズですね……と言っても、対戦したことはないんですが(笑)。でも、彼と対戦したかったというのが、MLBに挑戦した理由でもありますから。

 ボンズは腕が長いのに、インコースを華麗に捌いていた。日本人だと、腕が長いと詰まってしまって打てないんです。

 しかも、(ボンズがいたサンフランシスコ・)ジャイアンツが本拠地を置くオラクルパークは右からの逆風が強いにもかかわらず、それをものともしない。ライト側場外にあるマッコビー湾に直接飛び込むホームランを“スプラッシュ”と呼ぶのですが、当時のスプラッシュはほとんどボンズによるものでした。そんな超一流のバッターを、この目で見てみたかったんですね。

 でも、アメリカへ渡った2005年はボンズが怪我で試合のほとんどを欠場していて、ジャイアンツとは何度か対戦の機会がありましたが入れ違いに。翌年からは私が上手くいっていなかったり……メジャー通算最多本塁打記録を達成した755号、756号はテレビで見ていましたね。2008年にジャイアンツへ入団してからは、サインしてもらう準備もしていたんですが(笑)

斎藤のカーブ、厄介な“右”の江藤。

 さて、NPBへ話を移すと、私が指名された1993年はドラフト会議に逆指名制度が導入された最初の年でした。巨人への逆指名も考えはしたのですが、斎藤雅樹さん、桑田真澄さん、槙原寛己さんの3本柱があまりに強力すぎて、これは巨人に入ったとしてもローテーションに入れないんじゃないかと思って、阪神を選びました。

 3本柱の中でも、実際対戦してみて衝撃を受けたのが斎藤さん。投げたボールが迫ってくると、メロンぐらいの大きさに見えてくる。特にカーブはエグかったですね。自分の方に向かってきたと思って身構えると、もうアウトコースに決まってるんですから。真っ直ぐ、カーブ、真っ直ぐ、の3球で三振でした。

 巨人には落合博満さんをはじめ、清水隆行や阿部慎之助など、技術的にすごくレベルの高い左バッターも多くて苦労しましたね。もちろん私は右投げなので左のバッターはどうしても苦手なんですが、厄介なことに右打者には江藤智がいました。江藤がカープにいた頃は大して打たれなかったんですが、巨人へ移籍してからは満塁ホームランを何本も打たれてしまいました。

【次ページ】 弓長さんの誕生会が中止に……。

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