Saturday, May 21, 2022

18試合連続無失点の鷹・又吉はなぜ打たれない? データが示す進化の軌跡 - Full-Count

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結果球の2/3以上がカットボール、対左打者の被打率も改善

 初挑戦となったパ・リーグの舞台でも、“らしい”投球を存分に見せている。ソフトバンクに今季加入した又吉克樹投手は5月20日終了時点で18試合に登板し、失点ゼロ。完璧な投球でブルペンを支えている。今回は、又吉の経歴を振り返るとともに投球内容を紹介する。

 又吉は沖縄県立西原高校、環太平洋大、四国IL・香川を経て2013年ドラフト2位で中日に入団。1年目の2014年から67試合登板で9勝24ホールド、防御率2.21の成績を収めるなど、3年連続で60試合以上に登板した。17年は先発と中継ぎの両方を務め、防御率2.13をマーク。18年からの2シーズンはやや安定感を欠いたが、20年は防御率2.77。昨年は防御率1.28、33ホールドを記録した。同年オフにFA権を行使してソフトバンクに移籍し、今季は幅広い局面でブルペンを支えている。

 直近3年間の結果球の球種割合では、20年はスライダーが結果球の約半数を占め、ストレートは全体の1/4。シュートと、緩急をつけるカーブも、それぞれ10%以上駆使した。昨年はスライダーが大きく減少し、新たに投げ始めたカットボールが全体のほぼ半分に。カーブを全く使わなくなった。今年もここまでカットボールを多投する傾向は続き、全体の67.7%と割合はさらに増加。それ以外の球種では、ストレートとシュート、スライダーとチェンジアップの割合が、近い数字となっている。

 次に、又吉が残してきた年度別の指標を分析する。1年目の14年から3年間は投球回を上回る奪三振数を記録。3.50を上回れば優秀とされる「K/BB」も、この間は優れた水準にあった。17年は先発登板が多かったこともあってか、奪三振率が低下。キャリアワーストの防御率6.53を記録した18年には被打率も.321と悪化した。

 抜群の安定感を示した昨年もその傾向は続き、奪三振率5.83はキャリアワーストだった。与四球率も3.13で、K/BBは1.86と低い水準に。被打率が.215と低かったことでWHIPは1.09、防御率1.28だったが、指標の面では課題を残していた。しかし今季は奪三振率が8.35に上昇し、与四球率も1.96と大きく改善。K/BBも4.25と優れた水準で、キャリアでも最高の制球力を示している。被打率も.136と低く、WHIPは0.65という驚異的な数字だ。

 最後に、直近の5シーズンにおける又吉の左右別被打率を紹介する。右サイドスローの特性を生かし、直近5年間のうち4年で対右打者の方が被打率が低くなっている。奪三振も直近5年間は全て対右打者の方が多い数字に。与四球数は5年続けて対左打者の方が多くなっている。今年は対右打者の被打率が1割を切っている(.097)ことに加え、これまでやや苦手としてきた対左打者に対しても被打率.179と優秀な数字を記録している。

“宝刀”となったカットボールに加え、多彩な変化球を操る熟練のスタイルでパ・リーグの強打者を斬って取る又吉。独立リーグから這い上がり、セ・パ両リーグにおいてブルペンの主軸を務めるまでに成長した百戦錬磨のサイドハンドは、リーグ王座奪回を目指すチームにとって、欠かすことのできない存在だ。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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