熊本県南部を襲った豪雨では、老舗のウナギ店も被害を受けた。創業112年になる人吉市紺屋町の「
水害で流入した泥が残る「上村うなぎ屋」の駐車場で21日午前、3代目店主・上村由紀穂さん(70)の妻、恵子さん(68)が、泥かきや残った食器の水洗いに汗を流していた。店内の片付けはあらかた終わったが、壁や畳なども水を吸っており、大がかりなリフォームが必要だ。「毎年、丑の日はお客さんがいっぱいで忙しかったんですけどね……。来年の丑の日までには、営業再開できるようにがんばりたい」と前を向く。
店は球磨川の支流・山田川から約100メートルと近く、4日朝の豪雨で3階建ての建物の2階部分まで浸水した。従業員と店を見に行ったとたん、津波のような濁流が流れ込んできて、慌てて3階に逃げ、助かったという。
6日に店内を確認すると、冷蔵庫は倒れ、ウナギの焼き場や
球磨地方はかつてウナギの産地として知られ、店は1908年(明治41年)に由紀穂さんの祖父が開いた。しょうゆや砂糖などで作るたれはつぎ足しを繰り返し、創業以来同じものを使ってきた。現在は主に鹿児島、宮崎産のウナギを使い、炭火で焼いてかめのたれにつけて仕上げる。そうすることで、たれに脂が混ざってまろやかさが増し、甘辛い絶妙の味が保たれてきたという。
地元の常連や観光客らが連日300人以上詰めかけた店は、今年に入って新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち、さらに水害に見舞われた。由紀穂さんによると、再建には少なくとも1億6000万円かかるとみられ、「資金的に厳しい」と肩を落とす。
そんな中で、常連客らが「また食べに行きます」「絶対に閉めないで」などと電話をかけてくれた。冷蔵庫に保存していたペットボトル5本分の秘伝のたれが無事だったことも分かった。被災後、解雇せざるを得なかった従業員たちも、ボランティアで店の片付けに通ってくれる。「困難な道のりでも、一日でも早く再建して、被災した地元を元気づけたい」と夫婦は口をそろえる。
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July 21, 2020 at 01:04PM
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秘伝のたれ流失「泣く元気もなかった」…人吉の老舗ウナギ店、常連客に励まされ再開誓う - 読売新聞
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