北海道八雲町でトラックと高速バスが衝突し、5人が亡くなった事故は25日、発生から1週間を迎えた。亡くなったバスの乗客の一人、若崎友哉さん(33)=北海道函館市=の大学時代の恩師は「まさかこんな急に」と突然の悲報を嘆く。「優秀で頼れる学生だった」という若崎さんを研究者の道に誘ったこともある。その誘いを断って若崎さんが追い続けた夢は、事故により道半ばでついえた。
19日朝、テレビでニュースを見ていた九州大准教授の村上貴弘さん(52)はアナウンサーが読み上げた犠牲者の氏名に、耳を疑った。「若崎友哉さん、33歳」。かつて、北海道教育大函館校で指導した教え子の名だった。
「同姓同名の別人かも」。動揺を抑えながら、SNS(ネット交流サービス)で若崎さんの同級生に連絡を取った。嫌な予感は的中。現実に理解が追いつかぬまま、函館に飛んだ。
通夜の参列者は皆、別れを受け止められず、ぼうぜんとしていたという。会場には来られなかった同級生からの供花が飾られた。「近年はみんな忙しく、7年前にゼミ生の結婚式で集まったのが最後。仲が良かったのに、そのまま別れることになってしまった」。村上さんは声を詰まらせた。
生態学が専門の村上さんは、若崎さんが地元・函館の山を歩き回り、熱心に卒業研究に取り組む姿をよく覚えている。テーマは函館山に生息するシマリス。「週2回、欠かさず山に登り調査した。函館山が好きな気持ちも強かったんでしょうね」と振り返る。
高校時代は野球部員で体力があった若崎さんは、山中での長時間の調査も難なくこなした。研究室には毎日通い、同級生や後輩に助言した。だからこそ村上さんは学部生から1人だけ選ばれる実習助手に任命した。
信頼する教え子が4年生になると、村上さんは声をかけた。「大学院で研究を続けないか」。だが若崎さんは既に、函館市職員になる決意を固めていた。「早く地域に貢献したいんです」。まっすぐな瞳だった。
函館市によると、2012年に職員に採用された若崎さんは20年から人事課に所属。明るい性格で同僚を引っ張っていたという。だが、充実した生活は一瞬で奪われた。上司の葛西亘課長は「優秀だからこそ(早くから)主査に登用されていた。部下や後輩に慕われている様子が印象的だった」とショックを隠さない。
村上さんには今も、教え子を亡くした実感は湧かないという。「函館に貢献したいという思いは人一倍強かった。市の未来にも重要な人材になっていたと思うのに」。若者が夢を断たれたことへのやるせなさが募るばかりだ。【後藤佳怜、谷口拓未】
からの記事と詳細 ( 「地域貢献したい」33歳、追い続けた夢断たれ 北海道5人死亡事故 - 毎日新聞 )
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